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しまねこかぶり

(一応)理系女子大生の日記です。研究室に通っています。活字と2次元が好き。マイペースで人付き合いはちょっと苦手なタイプ

一人ラーメン

地元に帰ったけど暇だったので、一人でラーメンを食べに行った。

 

昔は絶対一人じゃ行けなかったなぁ。どうしても、まわりの目が気になっちゃって。今でも大学の近くのラーメン屋には一人で行けない。知り合いに会ったら恥ずかしい、と思ってしまう。

 

でも、知り合いの少ない地元なら全然平気だ。私は駅前のラーメン屋の、一番奥のカウンター席に腰を下ろした。

 

数分後、ジャージ姿の男子高校生が入ってきて、隣に座った。あ、この子も一人だ。ジャージだから部活帰りかな。祝日にも部活やって偉いなぁ。というか、高校生で一人で、(おそらく)学校の近くのラーメン屋に入れるんだ! 凄いなー、私、大学院生になった今だって無理なのに。

 

彼に密かな尊敬の念を寄せた直後、なんと彼は店員さんに、こんな注文をした。

 

「醤油ラーメン、煮干し多めで、白髪ねぎをトッピングしてください。あと餃子」

 

「サービスで小ライスが付きますがどうされますか?」

 

「それはいりません」

 

 

す、凄い! 煮干し多めにすると何が変わるんだ? トッピングのせるのは分かるけど、チャーシューでも味玉でもなくて白髪ねぎなの? 無料で食べられる小ライスをわざわざ断って餃子を頼むなんて......。しかも、注文に全く迷いがなかった。この子、ここによく来てるんだ。きっと一人で。

 

私が頼んだつけ麺が運ばれてきた(並盛、トッピングもなしといういたって平凡なもの)。少し遅れて、彼のラーメンと餃子もくる。ちらりと横目で見ると、ラーメンの上にはこんもりと白髪ネギの山がのっかっていた。

 

話す相手もいないので、なんとなく隣の動向をうかがいながら、つけ麺をすすった。途中で、5人の男子高校生の客が店に入って来た。彼らは制服だったので、文化部の部活帰りだろうか。みんなでテーブル席について、コーチがどうのとか、スマホのゲームがどうのとか、わいわい話している。いかにも男子高校生、という感じ。隣にいるジャージの彼と、同じ高校の可能性だってある。それでも彼は、構わず一人で黙々とラーメンをすすっている。

 

私たちはほぼ同時に食べおわった。彼が水を一口飲んで、私も飲んだ。彼が紙で口のまわりを拭いて、私も拭いた。あ、なんか真似したみたいになっちゃった。いや、それともいま私、わざとやった?  

 

彼が席を立とうとしないので、私は丁寧にリュックから財布を出して、丁寧に上着を羽織った。やっぱり彼は動こうとしない。私はお先、と心の中で呟いて、伝票と財布を手に席を立った。

 

店を出て、家の方向に歩く。横断歩道を渡るとき、車を確認するのに紛らせて店の方を振り返ると、100メートル先くらいに彼がいて、こちら側に歩いて来ていた。ジャージの肩にオレンジ色のトートバッグを提げていて、なんだかちぐはぐな感じがした。

 

少し歩いて、道を曲がるときに、悪戯心でまた後ろを振り返ると、まだ彼がいた。しかも、さっきより近い。目が合った気がして、うひゃあ、と私は下を向いてしまった。

 

道端でガレージセールをやっているのを認めて、私は足を止めた。服や食器なんかを物色していると、視界の端をオレンジ色のトートバッグが過ぎ去った。顔を上げてそちらを見やると、ジャージの後ろ姿が遠ざかっていくのが見えた。

 

私が一人でいるときに、同じく一人でいるひとに、私は弱いのだ。あーなんか、危なかった。早く帰ってアニメの続きでも見よ。オレンジ色の残像を振り払って、私は家路についた。