しまねこかぶり

(一応)理系女子大生の日記です。研究室に通っています。活字と2次元が好き。マイペースで人付き合いはちょっと苦手なタイプ

大根か焼き肉か

ここ2週間くらい、私の家の冷蔵庫には1本の大根が横たわっていた。

 

薄く土のついた、いかにも健康的な大根。いつも研究棟をお掃除してくれているおばさんから頂いた。あの日は驚いた。いつも通り、朝研究室に行くと、ホワイトボードの前に見慣れない台車が置いてあって、そこに大量の大根が乗っかっていたのである。研究棟の近くで収穫したらしい。

 

ただ、どう調理しようか。煮物かな。でもさすがに、具が大根だけじゃ寂しいかな。などと考えて気付けば2週間。昨日、とうとうその大根に包丁を入れた。研究室の先輩が、大根を簡単に漬物にできることを教えてくれたから、真似してみようと思って。

 

結構かたいな、同じ大きさに切るの難しいなあ、とか思いながら、頭の片隅に追いやった部分では研究室の人たちのことを考えていた。彼らは今ごろ、焼き肉に行っているはずなのだ。いつもなら私も誘ってくれるのに、今日はお声がかからなかった。あーあ。焼き肉。大根の漬物もおいしいかもしれないけど、どうしたって焼き肉の魅力にはかなわない。でも自分から声を掛けるのも図々しい気がして(なぜなら今私の財布には300円しか入っていないから)、結局行けなかった。あーあ。私、何か彼らを不愉快にさせるようなことしちゃったかな。

 

そう考えてしまうのが悔しくて、でも今切っている大根だって研究室でもらったものだし、明日研究室の先輩に、真似して大根漬けてみましたよと言うのを楽しみにしている訳で、逃げ場のない気分。

 

ここのところ、研究室という狭い場所で、少しずつ私の世界が完結していってしまいそうで、それがとてもこわい。飲みに行くのは大体研究室の人だし、昼食をとりながら新聞を読む習慣もなくなってしまったし(研究室の同期とごはんを食べるようになったから) 。研究室に馴染めてきたのかもしれなくて、それはとても喜ばしいことなのだけれど、去年の私が、用事のない平日の夜をどう過ごしていたのかをうまく思い出せない。

 

そこにはもっと広くて豊かな世界があったのにな。本やアニメ、新聞や音楽、あとサークルの友達や先輩。趣味や遊びに時間をとられすぎなくなって、その分研究室の人と長くいるのが苦痛でなくなったのは、研究に向き合うという意味でもきっといいことだ。でも、一人になったときの心まで、研究室に縛られたくはないのに。

 

ああ、そうか、これが大学院生か......。だんだんこれが当たり前になっていくんだろうか。私は考えるのをやめて、大根をなるべく同じ大きさに切り揃えることに意識を切り替える。